2025年7月のライトノベルは、白鳥士郎による『りゅうおうのおしごと』シリーズが、7月15日発売の第20巻『りゅうおうのおしごと20』(GA文庫)で遂に完結。若くして竜王という将棋のタイトルを獲得した九頭竜八一が、雛鶴あいという小学生の少女を弟子にするという将棋業界ものであり、空銀子という年下の姉弟子も関わってくるラブコメでもあったストーリーは、勝負がすべてのプロ棋士の世界のシビアさであり、女性がプロ棋士になることの困難さといったものを描いて、ラノベのファンに将棋の面白さを植え付けた。
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八一にも増して超天才棋士の藤井聡太八冠が現れ、作中に書いたフィクションだからこその出来事が次々に現実化していったことでも話題になったシリーズ。日本将棋連盟の会長に女流棋士の清水市代女流七段が就任し、その道が広がり始めたものの、女性のプロ棋士誕生だけは未だフィクションのまま。新刊に描かれるプロ棋士の銀子と編入でのプロ入りを目指すあいの“激突”を読みつつ、来るべきその日を待つのも良さそうだ。
『りゅうおうのおしごと20』には、電子限定だった15.5巻、16.5巻、17.5巻を一冊に収録した文庫本が付き特装版が別に用意されている。さらに、『りゅうおうのおしごと!20 電子限定版収録文庫&対局室風ディスプレイセット付き豪華特装版』(GA文庫)と銘打って、掛け軸タペストリーにビッグアクリルスタンドにオリジナル扇子まで付くバージョンもあって、19,800円(税込み)というラノベ史上空前の価格で送り出される。ラノベの歴史をその手にしたいなら購入は必至と言えるだろう。
本編が『青春ブタ野郎はディアフレンドの夢を見ない』で完結した鴨志田一の「青春ブタ野郎」シリーズに短篇集の新刊『青春ブタ野郎はビーチクイーンの夢を見ない+』(電撃文庫)が登場。アニメのパッケージに封入された特典小説『青春ブタ野郎はビーチクイーンの夢を見ない』や、映画『青春ブタ野郎はゆめみる少女の夢を見ない』の入場特典として配布された『青春ブタ野郎はホワイトクリスマスの夢を見る』と、書き下ろしの『青春ブタ野郎はトロピカルサマーの夢を見ない』を収録してファンの期待に応えつつ、7月5日から放送が始まるTVアニメ第2期『青春ブタ野郎はサンタクロースの夢を見ない』を盛り上げる。7月10日発売。
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長く続くシリーズ物では、上遠野浩平による「ブギーポップ」シリーズの最新刊『ブギーポップ・ナイトメア 悪夢と踊るな子供たち』(電撃文庫)が7月10日に発売。何やら街に異形の"雨"が降って終末が近づく中で、かつて最強によって滅ぼされたはずの悪夢が甦って人々から未来が奪われていくという。いつもながらにクールでペダンティックな雰囲気の漂う1冊になっていそう。最終学年の3年生編に突入した衣笠彰梧のシリーズ最新作『ようこそ実力至上主義の教室へ 3年生編2』(MF文庫J)は7月25日発売。主人公の綾小路清隆がAクラスから出て行く衝撃の展開から続く展開で彼の意図は見えるのか。先が読めなくなっているだけに、1冊1冊確かめながら読んでいく楽しみを味わえそう。
アニメの第2期制作が決まった燦々SUNのシリーズ最新作『時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん10』(スニーカー文庫)は7月1日発売。家を出ていた周防政近が周防家当主の座を目指して動き出し、妹の有希と仲直りを果たす中でアーリャさんと政近との関係にも変化が見られそう。7月5日深夜からTVアニメが始まる七野りくによるシリーズ最新刊『公女殿下の家庭教師20 暁告げし星杖』(ファンタジア文庫)は7月18日発売。規格外家庭教師のアレンと教え子との激突が描かれそう。アニメ化を機会にシリーズを最初から手に取る人も出て来そうだ。
新作では、第31回電撃小説大賞で《電撃の新文芸賞》を受賞した水品知弦『明けの空のカフカ』(電撃の新文芸)が7月17日発売。空が見えない浮遊洞窟内にある老人ばかりの村で暮らしていたただ一人の子供・カフカが地上からの来訪者と出会い、その話に感化されて祖父が残した飛行機を駆り、空へと飛び立つという冒険ストーリー。見知らぬ世界への興味を刺激され、飛び出す勇気をかき立てられる物語になっていそうだ。
『裏世界ピクニック』の宮澤伊織がかつて一迅社文庫から出した『ウは宇宙ヤバイのウ!~セカイが滅ぶ5秒前~』がSFの牙城、早川書房で復刊した上に7月16日に続編『ウは宇宙ヤバイのウ!2-天の光はすべて詐欺-』(ハヤカワ文庫JA)が出るから世の中は分からない。地球を襲う銀河列強種族の攻撃に果たして星間諜報組織〈偵察局〉エージェントの久遠空々梨はどう立ち向かう? ラノベドタバタSFの神髄を見せてくれるだろう。
『殺し屋の営業術』で第71回江戸川乱歩賞を受賞した野宮有が、メディアワークス文庫から新刊『きみが死んだ八月のこと』を7月25日に刊行。失踪した恋人の有森夏希が死んだと聞いた大学生の春木初が、東京を飛び出し夏希の遺影と対面したが、そこに写っていたのは別人だった。初は夏希と名乗っていた女性がどこかで生きていると聞き、正体を確かめる旅に出る。ミステリーの新しい旗手が紡ぐストーリーを堪能しよう。
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(文=タニグチリウイチ)
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